相続税は少なくても10%、多いと55%も税金がかかります。税金の支払いってゾッとしますよね。亡くなった方が使用していた自宅や事業用の不動産は、相続する人にとっても生活の基盤になることもあり、高額な税金の支払いのために自宅を売却しなければいけないなんてことになると生活も安定しません。そのため、一定の要件を満たす宅地等については最大80%まで評価額を下げて相続税の負担を軽減することができる制度があります。配偶者など残された家族がその家に住み続けられるように考えたものです。
自宅を守る小規模宅地等の特例とは?
自宅の土地は、特例の条件が合う人が相続すると「小規模宅地等の特例」という制度を利用することができ、相続税がゼロになったり大幅に軽減できたりします。なぜ「小規模」という名称がつくかと言うと、土地の面積が条件のひとつになるからです。一般の居住用の宅地であれば330㎡までが評価額減額の対象になります。事業用だと400㎡になります。減額の割合は80%とかなり税金が軽減されます。亡くなった人が自宅として使っていた宅地等に対する特例として、その宅地等を相続または遺贈により取得した親族は、一定の要件を満たせば、その宅地等のうち330㎡までの部分について評価額を80%下げることができるということです。
面積以外の一定の要件とは、相続人によるものです。一定の要件として対象となる相続人は「配偶者」「同居親族」「別居親族(家なき子)」となります。まず、亡くなった方の配偶者は無条件で特例を受ける対象になります。同居親族とは、相続が発生したときに亡くなった方と同居していた親族のことをいいます。実際に同居の実態がないとダメで、仮に住民票があっても同居していなければ特例を受けることはできません。別居親族は、亡くなった方に配偶者や同居している相続人がいないダメなど条件が厳しくなります。判断が少し専門的になってくるので、悩んでいる方は税理士に相談するといいでしょう。
特例を使える人が相続しないと損をする
前述のように、この特例は要件を満たす人と満たさない人がいます。土地の評価額が80%も軽減されるということは、評価額が5,000万円の土地であれば1,000万円になるためかなりの効果があります。そのため、誰が土地を相続するかによって税金の支払いが大きく変わることになります。
土地の評価額が5,000万円で、家屋の評価が2,000万円、そのほかに金融資産が2,000万円ある場合は、小規模宅地等の特例を受けることで土地の評価額は1,000万円になり、仮に同居している子供Aさんと同居していない子供Bさんが相続人になる場合、同居しているAさんが小規模宅地等の特例を使って相続をすると相続の課税価格5,000万円から相続人ふたりの基礎控除額4,200万円を差し引いて課税対象となる遺産の総額は800万円ということになります。単純に相続税率を10%とすれば、ふたりで支払う相続税は80万円でよいということになります。
これが、同居していないBさんが土地を相続してしまうと同居と言う要件を満たさないため、小規模宅地等の特例の適用がなくなり、課税価格はまるまる9,000万円になり、基礎控除額4,200万円を差し引いても4,800万円が課税遺産の総額になり、ひとりあたりの相続税は単純計算で2,400万円の15%から控除額50万円を差し引いて310万円になります。同じ遺産を相続するのにもかかわらず、かたや相続税が80万円、かたや620万円と大きく変わってきます。事業用や賃貸の土地であっても、その事業を引き継ぐ人が相続をすることによって特例が適用されるため、誰が何を相続するのかは慎重に検討した方がよいですね。
いかがでしたでしょうか。同じ不動産でも相続の仕方を間違えてしまうとせっかくの資産を目減りさせてしまうことになります。心配な方は専門化に相談をしながら話を進めていくようにしましょう。