前回は、相続が発生したらまずは戸籍を調べて相続人を確認することがテーマでした。法定相続人を確認するということでしたが、もし亡くなった方が遺言書をのこしていれば、原則としては、遺言書の通りに遺産の分割を進めていくことになります。いずれにしても、誰がどの財産を受け取るのかということですが、受け取る財産がはっきりしていないとこれも揉め事の原因になります。遺言書に書いてあるからと言って、必ずその財産が存在するかどうかも分かりません。そこで、「誰」がはっきりしたら、「何」をはっきりさせるために、遺産の洗い出しが必要になります。
プラスの財産もマイナスの財産もぜんぶ調べましょう
相続の対象となる財産を調べるのは意外とたいへんです。なぜなら、財産と言っても、現預金や株などの金融資産、自宅などの不動産のほかにも、ゴルフやリゾートなどの会員権、貴金属、宝石、骨董品や美術品、車などもあるからです。不動産も実際に所有している土地や建物だけではなく、借りている土地の借地権も相続の対象になります。見落としがちなのが著作権や商標権などの権利関係だったりします。経済的な価値があるものはすべて財産となります。
経済的な価値と言っても、プラスの財産ばかりではありません。借り入れなどのマイナスの財産も引き継ぐものに含まれてしまいます。住宅ローンやカードローンなどの借り入れ分の他に、医療費など未払いになっているものもすべてです。住宅ローンは一般的に団体信用生命保険に加入しているので、住宅ローンが残っている状況で亡くなってしまった場合は保険金でローンを返済することになります。借り入れなどは家族に内緒にしていても不思議ではありません。相続してからマイナスの財産に気が付いてしまうと、思いもよらない借金を引き継ぐことになります。これはかなりの注意が必要です。
では、その財産はどこで調べればいいのでしょうか?
すべて把握しないと大変なことになると言っても、どこから調べたらいいのか分からないことも多くあります。相続はすべての人がほぼ経験することですが、初めてのことも多くあるからです。さて、何から洗い出すのが良いでしょうか。
まずは、預貯金を調べるところからではないでしょうか。調べると言ってもどこの金融機関が対象になるのか分からないので、自宅にある資料や郵便物からあたっていくしかありません。まだ仕事をしていた場合は、勤務先などから確認します。勤務先がある場合は、もしかしたら死亡退職金などもあるかもしれませんので、いずれにしても調べる必要はあります。この被相続人が亡くなったことによって発生する死亡退職金や保険金などは、指定された受取人の財産という扱いになるので、遺産分割の対象にはなりません。ただ、相続税の計算には「みなし財産」として加算される場合がありますのでご注意ください。
銀行も最近はネット銀行など紙の通帳がないケースもあります。口座のある金融機関が分かれば、残高証明書を発行してもらい金額を調べることになります。土地や建物などの不動産であれば、法務局に行って調べることができます。不動産のある地域を管轄している法務局で登記事項証明書を発行してもらいましょう。不動産の登記事項証明書は、誰でもオンラインで請求できます。不動産は、固定資産税などの郵便物で確認する方法もあります。
さて、このような作業もとても大変ですよね。だからこそ亡くなる前の準備の重要さも近年では話題になっています。備えあれば 憂いなしということですね。家族でいつでも話し合えるようにしておくことも大切なのかもしれませんね。